東京地方裁判所 昭和41年(特わ)770号 判決 1967年8月28日
本籍
東京都新宿区歌舞伎町一四番地
住居
同都中野区東中野一丁目二八番五号
会社役員
林政雄
大正八年六月四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮本喜光出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金八〇〇万円に処する。
右罰金を完納しないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
但し、本裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和四〇年六月頃まで東京都新宿区歌舞伎町一四番地に事務所をおき、喫茶店、バー等を経営する傍ら、小島乳業株式会社の取締役として給与所得を受けていたものであるが、自己の所得税を免れる目的をもつて右喫茶店、バー等の売上の一部を除外したり、架空人件費を計上する等して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和三八年分の実際課税所得金額は別紙一修正損益計算書並びに課税所得計算書(昭和三八年分)記載のとおり四、〇九三万八、七〇〇円であり、これに対する所得税額は二、二七一万一、七九〇円であるにもかかわらず、昭和三九年三月一〇日、東京都新宿区柏木三丁目三一二番地所在の所轄淀橋税務署において同署長に対し、課税所得金額は三五四万二、九〇〇円でこれに対する所得税額が一〇一万八、七九〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右年分の正規の所得税額と申告税額との差額二、一六九万三、〇〇〇円については法定の納付期限を経過するも納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の所得税を逋脱した、
第二、昭和三九年分の実際課税所得金額は別紙二修正損益計算書並びに課税所得計算書(昭和三九年分)記載のとおり四、〇〇〇万八、六〇〇円であり、これに対する所得税額は二、二一〇万七、三九〇円であるにもかかわらず、昭和四〇年三月一五日、前記淀橋税務署において同署長に対し、課税所得金額は九一三万六、一〇〇円でこれに対する所得税額が三六六万九、九〇〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右年分の正規の所得税額と申告税額との差額一、八四三万七、四九〇円については法定の納付期限を経過するも納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の所得税を逋脱した
ものである。
(証拠の標目)
(一)、全般について、
一、吉田次郎こと徐紀宝の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(昭和四〇年一〇月二九日付=以下四〇・一〇・二九の如く略記=並びに四〇・一一・二七)並びに検察官に対する供述調書
一、河原玄三の検察官に対する供述調書
一、関口和男、小林茂三、三浦信成の各大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書
一、中村幸彦、中村茂樹の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、住友銀行新宿支店長藤井真義作成の証明書(普通預金関係)一〇通(記録第三二三号=以下単にNo.三二三の如く略記)、同定期預金関係一通No.=三二四、同通知預金関係一通=No.三二五、同当座預金関係一通=No.三二二
一、住友銀行大森支店長上野有造作成の残高証明書=No.三〇二
一、住友銀行有楽町支店長赤間義邦作成の証明書(定期預金関係)一通=No.三二一
一、大和銀行新宿支店長楠岡善行作成の証明書(普通預金関係)七通=No.三一八、同(定期預金関係)一七通=No.三一九、同通知預金関係一通=No.三二〇、同当座預金関係二通=No.三一七
一、第一銀行新宿西口支店長甘泉憲一作成の証明書(当座預金関係)二通=No.三二七、三二八、同普通預金関係三通=No.三二九、三三〇、三三一、同定期預金関係一通=No.三三二、同通知預金関係一通=No.三三三
一、静岡銀行熱海支店長勝又健作成の証明書一通=No.三一五
一、富士銀行新宿支店長大野進一作成の証明書(普通預金関係)三通=No.三一三、同定期預金関係五通=No.三一四
一、日本勧業銀行新宿支店長越智泰二郎作成の証明書計六通=No.三一二、二九九
一、住友銀行銀座支店長三谷光雄作成の証明書一通=No.三一一
一、青梅信用金庫営業部長斉藤文夫作成の証明書一通=No.三一六
一、大蔵事務官岩田稔作成の脱税額計算書二通(但し、四二・八・二六の分)
一、押収にかかる収支明細表計二袋(昭和四二年押第四一三号の一〇、一一)、支払一覧表計二袋(同号の一三、一四)、所得税確定申告書三通(同号の一六)、所得税修正確定申告書二通(同号の一七)、普通預金通帳計八冊(同号の一八、二〇、二一、二六、二七、二八、三六)、通知預金通帳一冊(同号の一九)、定期預金通帳計一〇冊(同号の二九ないし三四)並びに定期預金利息計算書一綴(同号の三五)
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書五通、検察官に対する供述調書二通並びに同人作成の上申書一八通
一、被告人の当公判廷における供述
(二)、別紙一および二の各修正損益計算書の勘定科目のうち
(1)、売上について、
一、弓削純子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、押収にかかる総勘定元帳計一五冊(前同押号の一、二)、収支明細表綴二綴(同号の四、一二)、売上伝票一綴(同号の九)
(2)、仕入について、
一、上田和雄、坂口和治、岡田和久の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押収にかかる給料明細表綴計一一綴(前同押号の三、一五)、収支明細表綴一綴(同号の四)、未払金明細一綴(同号の五)、売掛元帳計三冊(同号の二二、二三、二四)、売掛金台帳七冊(同号の二五)
(3)、現金仕入(別紙二関係)について、
一、押収にかかる未払金明細一綴(前同押号の五)
(4)、人件費について、
一、弓削純子の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一一・八)
一、大蔵事務官岩田稔作成の人件費水増金額調査書
一、押収にかかる総勘定元帳計一五冊(前同押号の一、二)、給料明細表綴計一一綴(同号の三、一五)、収支明細表綴一綴(同号の四)
(5)、水道光熱費、交通費、消耗品費、事務用品費、交際接待費、雑費、修繕費、公租公課、雑損失(以下いずれも別紙二関係)について、
一、吉田次郎(徐紀宝)の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一二・四)
一、今仁真喜雄の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、池田正雄作成の上申書
一、押収にかかる未払金明細一綴(前同押号の五)
(6)、支払利息について、
一、大蔵事務官岩田稔作成の支払利息調査書
(7)、減価償却費について、
一、吉田次郎(徐紀宝)の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・一二・四)
(8)、経費について、
一、呂欽石、千葉政夫、吉武源司、株式会社武尾工務店代表者武尾三郎各作成の上申書
一、斉藤武彦の大蔵事務官に対する質問てん末書
(9)、雑所得について、
一、株式会社地球会館代表者張耀西、恵通不動産株式会社代表者林以文、黄朝福、恵通企業株式会社代表者林以文各作成の上申書
一、加来章、黄錦聯、沈水木、大竹福次、林以文の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、加来の分は二通)
一、大蔵事務官岩田稔作成の大竹福次関係雑収入調査書
一、押収にかかる総勘定元帳(仮払勘定社長分)計四冊(前同押号の三七ないし四〇)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条によりその改正前の所得税法第六九条第一項前段に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて右刑期並びに金額の範囲内において被告人を懲役六月および罰金八〇〇万円に処し、なお右罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項に則り金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状を考慮のうえ同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤暁)
別紙一
修正損益計算書(自昭和38年1月1日 至昭和38年12月31日)
林政雄
<省略>
別紙二
修正損益計算書(自昭和39年1月1日 至昭和39年12月31日)
林政雄
<省略>
課税所得計算表
<省略>